【一万字書評】THE MODELザ・モデルで愛を届けられるのか?

昨今、インサイドセールスという言葉も良く聞くようになった。日本国内に限って言えば、かつては米外資系企業の使う特殊な手法であった、分業型の営業組織もスタートアップを中心に一般化している。 

 特にSaaSプロダクトを開発運用するスタートアップが分業型営業プロセスの教科書としているのが本書、THE MODEL(ザ・モデル)である。本書は日本のSaaS文化に貢献し、ともに普及した。今回はその本書を読み解き、分業体制に興味がある、または非分業型の営業スタイルで成果がでているが、昨今普及しているTHE MODEL型の営業とはなんなのか?疑問と懐疑心をもつセールスへ向け、昨今のトレンドの源流を探る手がかりになる情報になればと思う。


INDEX

  1. 「THE MODEL ザ・モデル」の著者 福田康隆について
  2. 「THE MODEL ザ・モデル」とは何か?
  3. 「THE MODEL ザ・モデル」型の分業スタイルのメリット
    1. メリット1 同じリズムの仕事に集中し生産性が高まる
    2. メリット2 ボトルネックを把握し、対策を打ちやすい 
  4. 「リサイクル」でリード獲得を
    1. 枯渇する新規リードをどう補うか?
    2. リードをリサイクルするという発明
  5. 購入に関する主導権の変化
    1. 営業が接触する前に顧客の購買プロセスの67%は終わっている
  6. 共同作業でリスクを回避
    1. 延々と続く負のループ
    2. 負のループから脱出する方法
    3. マーケからCSまで、逆の流れをつくり、共通目標を与える
    4. 動くのは人間という事を忘れてはならない
  7. 分業プロセスの各部門
    1. マーケティング:見込み客を次のステージに進める
    2. インサイドセールス:商談供給を調整
    3. 営業(フィールドセールス):商談を受注に結びつける
    4. カスタマーサクセス:長期的な利用・拡大に繋げる  
  8. 分業化とは何なのか?
    1. 分業≒分析
    2. デジタル化できなければ分業化はできない

    3. デジタルデータを揃える負債

    4. THE MODEL型の営業プロセスのメリット・デメリット

  9. 最適化され、分業化が進んだ営業プロセスは愛を届けられるのか?
    1. 営業と愛
    2. しかし、いずれにせよ愛は届ける必要がある


3分でThe Model理解したい方はこちら↓


 

「THE MODEL ザ・モデル」の著者 福田康隆について

本書の著者、福田康隆氏を紹介する。彼は、1996年に日本オラクルに入社し、セールスコンサルタントとして勤務していた。2001年アメリカオラクル本社に勤務。2004年佐野力氏の進めによりセールスフォース・ドットコム米国本社へ入社。米国で営業プロセスを学び、翌年3月に同社日本法人にてSMB市場向けの組織づくりとオペレーションの実施を開始した。

 以後9年に渡り専務執行役員兼シニアバイスプレジデントとして日本市場における成長を牽引した。2014年マルケト日本法人代表取締役社長に就任。AdobeによるMarketo本社買収後はアドビ システムズ専務執行役員・マルケト事業統括として活躍していたが2019年末をもって退社し、現在はジャパン・クラウド・コンサルティング株式会社の代表取締役社長である。

本書はMarketoから福田氏が離れた年、2019年1月30日に発売されている。 



「THE MODEL ザ・モデル」とは何か?

本書「THE MODEL」は著者がセールスフォース・ドットコム米国本社で習得し日本法人へ輸入した、マーケティング、インサイドセールス、営業の分業体制についての説明と、また経営者として成長に至る過程を成功体験と失敗談を交えて書かれたものである。

 その分業プロセスを分かりやすく図式化したものを当時、福田が象徴として「THE MODEL ザ・モデル」と名付た。そして、THE MODELは、日本国内で分業型営業プロセスを指す名詞として定着した。

 本書では、どんな会社でもこの分業モデルが適用できるよう一つ一つのプロセスが具体的に説明されている。  急速にIT化の進んだ2000年代初頭に、従来の営業スタイルからマーケティングオートメーションを導入した後の営業スタイルへとどのように変貌したか、そして各分業プロセスについてそれぞれ説明していきたい。 




「THE MODEL ザ・モデル」型の分業スタイルのメリット

引用:「THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス」福田康隆著/株式会社翔泳社出版/2019年1月30日発行


2000年代初頭、それまで日本で主流であったのは営業が商談の発掘からクレーム対応まで全てをカバーするというものであったが、セールスフォース・ドットコム米国本社では営業が分業されており、そのプロセスがきちんと整理されており、問題点や課題等が全て可視化できるようになっていた。今でこそ大量の情報を管理し、必要に応じて抽出することが当たり前のように行われているが、ソフトウェアがあまり浸透していなかった時代では、営業において情報を共有するより一人が初めから最後までを管理する方が効率がよかったのかもしれない。


メリット1 同じリズムの仕事に集中し生産性が高まる 

 分業体制には同じリズムの仕事に集中することで生産性を高めることができる、というメリットがある。そして営業組織自体がアカデミーのような教育機関の役割を担っているため人材育成も兼ねている。そのため業界トップクラスの営業を採用しなくても、未経験者を自社で育てることができるし、一つのことに集中して数多く経験させて上に引き上げていくことで、将来的に経験豊富な人材を育成することができるのだ。

 これは会社にとってとても好都合なことではないだろうか。一から教育した人材が数年で辞めてしまったり、部署が変わる度に指導期間がとられていては会社全体のパフォーマンスが下がってしまう。常に離職率の高い会社だと、稼働率がかなり低いままずっと運営しているということになってしまう。分業にすることでキャリアアップが明確にもなり、部署を異動したあとも、培った視点を持って新たな業務に携わることができるので理解力も深いはずだ。そして、キャリアアップが明確になるということは、自身の将来設計がしやすくなり、目標がはっきりとするので長く会社に勤めることになり、離職率の低下にもつながるのではないだろうか。 



メリット2 ボトルネックを把握し、対策を打ちやすい


 また、各プロセスを担うパフォーマンスを評価する中間指標を設定することで、ボトルネックを把握し、すぐに対策が打てることも分業体制のメリットである。従来の営業スタイルでは、チェックする数字はせいぜい売り上げや訪問件数くらいという会社が多かったが、これでは業績が良くない時にどのような対策をすれば良いのか判断することが難しかった。

 問題点を正確に割り出すことで、正しい対処をすぐにとることができる。逆に言えば問題点があやふやであれば、適切でない対処をしてしまい一向に改善されぬまま次なる問題を抱えてしまうのである。営業の分野だけにとどまらず、問題点が正確に分かっていないという状況は私たちの生活の中でも多々見受けられる。 



「リサイクル」でリード獲得を


引用:「THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス」福田康隆著/株式会社翔泳社出版/2019年1月30日発行


枯渇する新規リードをどう補うか?

どのような会社でも自社に合った分業体制を確立すれば、方程式の通りにビジネスを順調に伸ばすことができる。しかし新規リードは永遠に増え続けることはない。

 最初のうちはセミナーやウェブサイトからのコンバージョンなどあらゆるリード獲得は全て新規リードであるが、セミナーも回数を重ねれば以前に参加した人の割合が増えてゆく。ウェブサイトも同様だ。 


リードをリサイクルするという発明

そこで、ビジネスを続ければ続けるほど増えてゆく失注や未フォローの顧客を再び商談化のプロセスへリサイクルする流れを作ることが重要となってくる。このリサイクルのポイントは、これ以上リード獲得コストがかからず、大幅にマーケティングコストを圧縮できる可能性があるということである。

 これもソフトウェアがあまり浸透していなかった時代では、事業年数が経つほど増えていく、リサイクル対象のリードを管理することは難しかっただろうし、何ヶ月後にどのリードがどのような動きをしているかを知るなんて不可能だっただろう。本書ではこのポイントを強く、気づきの臨場感をもって記述されている。

 なんだか受注に至らなかったリードにもう一度コンタクトを取ることは、また同じ結果になるのではと思ってしまいそうだが、問題が解決していない限り、そのリードをリサイクルできる可能性はあるのである。重要なのはタイミングだ。

 マーケティングオートメーションの導入により、それぞれのリードにとってのベストなタイミングを見つけ出すことが可能になった。業年数が経てば経つほど加速度的に増えていくこのリサイクル対象のリードを意識するかしないかで、まるでビジネスの組み立てが変わってくるのである。この課題に対するソリューションがマーケティングオートメーションである。 



購入に関する主導権の変化

引用:「THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス」福田康隆著/株式会社翔泳社出版/2019年1月30日発行


2000年代前半は企業サイトのコンテンツはさほど充実しておらず、リード情報もきちんとフォローされていなかった。よってリード獲得と同時に電話をかけるというオペレーションの実施で他社と差別化を測ることができた。


営業が接触する前に顧客の購買プロセスの67%は終わっている

しかし今日では情報収集から比較検討まで、顧客が独自に自分の好きなタイミングで行うことができ、2012年にシリウス・ディシジョンが発表した調査によると、営業が接触する前に顧客の購買プロセスの67%は終わっているというのだ。

これは購入に関する主導権が売る側から買う側に移ったことを意味している。

 企業にとっては顧客との接触機会が減り、過去に比べて状況が不利になったように見えるが、顧客一人一人の検討ステージを分解し、One to Oneのマーケティングを実施することで圧倒的な競争優位となることができる。デジタル状の顧客滞在時間が大幅に増え、その行動をトラッキングするテクノロジーが発展してきたからだ。

 確かに、必要ではないけどあったらいいな、というレベルで買わずじまいであった商品を、給料日やイベントあたりに通知メールによってもう一度目にすると買ってしまった、という経験がある人は多いのではないだろうか。インターネットの普及により購入者の行動が変われば、企業側もそれを利用して営業法を変えればいいということなのだ。 



共同作業でリスクを回避

本書では、分業による副作用についてもフォローされている。分業はビジネスが行き詰まってくると実はほころびが出やすい。

 新規リードが減少すると、マーケティング部門は一気に大量の名刺が獲得できる展示会などの施策に走り出す。するとインサイドセールスは、過去のリードを丁寧に掘り起こすより、無料トライアルサインアップ客といった商談化しやすいリードを優先的に探し始める。 


延々と続く負のループ


新規リードが一巡するとようやく過去リードのフォローを開始するが、後回しにしていたため頼りにできる情報が連絡先等の基本情報のみとなっていることが多く、どのようにフォローするかという整理ができない。必然的に片っ端から電話をしてアポイントを取るというオペレーションが展開される。インサイドセールスからの商談供給が減ってきた営業は、見込みの薄い状態でもパスを促し、本来集中すべき顧客のフォローの質が低下、生産性が下がる。

 そのような状況を見かねたマネージャーは、リードが足りないとマーケティング部門にプレッシャーを与え、そうなると最初に逆戻りし、延々と負のループが続いてしまうことになる。 


負のループから脱出する方法

このような状況から抜け出すにはどうしたら良いのだろうか。

 そもそも人間は、グループに分けられた途端、敵対意識を持つという習性がある。グループ関係を良好にするには、共同作業で共同の目標を達成するという意識をそれぞれに持たせることが重要である。 


マーケからCSまで、逆の流れをつくり、共通目標を与える

そのためにはマーケティングからカスタマーサクセスに至る一連の流れに、逆の流れも作れば良い。双方向の流れを実現させれば売り上げ向上という共通目標に対して共同作業をする感覚が芽生えてくるのである。

 様々な部署に様々な人間がいる会社で、同じような熱量で共同の目的を持って働くことは難しい。顧客との接点が全くなければ、自分たちの仕事が最終的にどのような形になってどう提供されているのかが想像できないため、目の前の作業をただこなす、というようになってしまう。分業の一連の流れに逆の流れも付け加える、ということは社内でのコミュニケーションが増えるということである。フィードバック云々以前に、日頃から注意点や気づきなどを言い合える関係性であることが大事だが、これがなかなか難しいのではないだろうか。いつもイライラしている先輩には話しかける機会をできるだけ少なくしたいし、上司が間違えている場合でも機嫌が悪くなりそうなら、できればこちらから指摘はしたくない。他人に気遣いができる余裕をもつために、各々何が必要かを考えることも大切ではないだろうか。 


動くのは人間という事を忘れてはならない

忘れてはならないのが、どれだけ科学的で機能的なプロセスを導入しても結局のところそれを動かすのは人間であり、ヒューマニティーを無視してしまっては絶対に機能しない、ということである。また、本に書いてあるモデルプロセスをそっくりそのまま真似するのでなく、それぞれの会社の規模や商品、顧客層に合わせて自身のプロセスを確立することが重要なのである。



分業プロセスの各部門

引用:「営業効率を最大化する「The Model」(ザ・モデル)の概念と実践」鈴木 淳一 監修/salesforce.com, inc./2020年1月14日投稿/https://www.salesforce.com/jp/hub/sales/the-model/ 


次に、THE MODELで定義される分業プロセスの各部門について簡単にまとめたい。


マーケティング:見込み客を次のステージに進める  

従来マーケティング部門は商談を作るまでが役割とされていた。しかし現在ではオンライン情報が圧倒的に増え、チャネルが多様化するなかでカスタマージャーニー全体をサポートすることが重要となっている。

 マーケティングオートメーションが登場してからは、ウェブサイトへのアクセス、メールの開封、クリックなどオンラインチャネルの行動情報をトラッキングできるようになり、見込み客の検討ステージを分け、企業側がパーソナライズした情報を提供することで、より満足度の高いものとなっていった。

 検討ステージは、客観的な指標を得て、リード獲得、リード育成、有望リードというように設計し、測定可能にすることがポイントである。 また、商談に至らなかったリードや失注した商談などは、リサイクルの箱に入れてプールしておく。一定期間メールの配信は止めるが、数ヶ月後に頻繁にサイトへのアクセスがあれば、すぐに営業に報告してフォローし、適切なタイミングで必要な情報を供給する。

 リサイクルボックスの中のコンバージョンレートを改善し、リード育成に戻すことで獲得コストのかからないリードを増やすことができる。

 マーケティング部門はリードを獲得しなければならない、と常に考えがちだが、本当の目的は見込み客を次のステージに進めることである。そのためにどのようなチャネルが有効なのかを考えるのが正しい順序である。 


インサイドセールス:商談供給を調整

次にマーケティングオートメーションの普及により、飛躍的に高度なものへと進化したインサイドセールスについてまとめたい。金額をコントロールする営業に対し、インサイドセールスは数を重視するしかない。つまり業務効率の向上が成果に直結するのである。

 マーケティングオートメーションが提供する機能の一つにリードスコアリングがある。属性スコアと行動スコアからから成り、一定の基準を満たしたものだけを次の工程に引き渡すというものだ。日々蓄積されて、人間ではフォローしきれない大量のリードの中から、優先的なリードを見つけ出してくれる。そして有望リードにコンタクトを取る際は、ウェブサイト内の行動情報をトラッキングすることで、事前に入れておくべき知識が選別でき、スムーズに会話を進めることができる。リードスコアリングは「こういう行動をとる人は購買意欲が高い」という逆算思考で設定することが重要である。  また、インサイドセールスが成果を出すためには、前述のリサイクルボックス内のリードをどれだけ商談化できるかにもかかっている。マーケティングオートメーションでは「予算がない」などといった理由を分類した上でリサイクルに回し、理由に合わせて適切なコンテンツが配信され、リードスコアが上がってくると再度フォローリストに追加されるという仕組みを構築することができる。かつては手作業で行なっていた部分がMAにより綿密に補われることで、短期間でより多くのリードをフォローし、生産性を上げることが可能になった。

 インサイドセールスにおいて、「量と質、どちらが大事か」というのは誰しも頭を悩ますテーマではないだろうか。数字だけで評価されるとなると、アポイントを取ることだけに集中しヒアリングが不十分なままどんどん営業にパスされていってしまうことになる。 マネージャーは普段からインサイドセールスの電話内容に耳を傾けるなどして、コール件数や商談化の件数だけでなく、良い仕事といい加減な仕事を見極める眼力が必要とされる。 最後にインサイドセールスに求められる重要な役割として、商談供給を調節すること、があげられる。つまり営業の持っている商談数に応じて、パスするリードを調節するということである。営業がトラブルを抱えていないか、商談が足りなくなっていないかなど、どこにボトルネックが発生しているかを常に観察しながら商談化の基準を調節し続けることが重要なのである。 


営業(フィールドセールス):商談を受注に結びつける

次は営業(フィールドセールス)について。商談のフェーズ管理をうまく運用している企業はまだ多くはないようだ。

 商談を細分化してフェーズ管理を行い、パイプラインやフォーキャストの管理をすることが重要である。

  1. 「リード以上、商談未満」のフェーズ1
  2. 最も重要と言われる、「不要」を突破しこのサービスが必要だと認識してもらうフェーズ2
  3. 他社との差別化を認識させる「評価と選定」のフェーズ3
  4. 「最終交渉と意思決定」のフェーズ4、
  5. 「稟議決裁プロセス」のフェーズ5

に分けられる。

 各フェーズにより正確な数字を記入し、フェーズ移行判定基準を明確にすることで、フォーキャストの精度を上げることが可能となる。  成果をあげている組織は常に少し先を見据えてパイプラインの数字を気にしている。

 また「ネクストステップは何か」「この会社にとっての競合はどこか」「顧客が今期に発注する理由は何か」など、問題はどこにありそうかを常に見極めることが、商談を受注に結びつけるために必要である。 


カスタマーサクセス:長期的な利用・拡大に繋げる

近年SaaSに代表されるサブスクリプションモデルの企業では、当たり前のようにカスタマーサクセスが置かれるようになってきた。ベンダー側は毎年の契約更新をしてもらいたい一方で、導入したユーザー側もきちんと成果を出したい、という双方の利害が一致したところに生まれた部署である。

 ここで重要なのが、マーケティングや営業でも同じように、顧客のステージを判定し、どのように導いていくかということである。契約後にはまずオンボーディングというプロセスがある。その後、導入支援、活用促進、契約更新といった具合にプロセスが進んでいき、これら全体の総称がカスタマーサクセスなのである。

 カスタマーサクセスで重要なのは、「顧客に教える」でなく「顧客に学ぶ」という姿勢である。初めは顧客に教える立場であっても、顧客から学びながら自分をバージョンアップさせていく向上心がないと、あっという間に顧客に追い抜かれてしまう。

 また、すでにSaaS業界ではその兆候が見られているが、コンサプションベースの課金モデルが増えてきたことにより、これからはカスタマーサクセスと営業は融合するであろうと予測される。新規契約を獲得することより、長期的に利用・拡大に繋げられる能力を持った人材がますます必要とされる時代になるようである。 


分業化とは何なのか?


ここまで、分業型営業のプレイブック、教科書である「THE MODEL」の内容を解説してきた。ここで、従来のセールスプロセスと何が違うのか?整理したい。

 マーケティング活動を通したリード集めから受注し、その後顧客サポートを行う。これは分業しているという一点を除けば、古くからある一人のセールスが一貫して行う営業プロセスと変わらない。 


分業≒分析



pickupon株式会社提供  セミナー資料より https://contents.pickupon.io/pages/3983399/blog


SFAとの連携を売りにするCTI 会話サマリーAI電話pickupon代表の小幡氏は分業≒分析だと話す。「分析とは分ける事・行為であり、分業する事により、分析になる」と。 ※1

※1 オンラインセミナー 組織が強くなる!リモート営業に最適なクラウドIP電話活用術 
https://contents.pickupon.io/pages/3983399/blog

  

 これはTHE MODEL内で福田氏がいう、ボトルネックを把握し、対策を打ちやすい事と対応する。THE MODELは営業プロセス分析のフレームワークの一つだという見方だ。


デジタル化できなければ分業化はできない

また、SFA Salesforceと競合のSFA、クラウド営業支援ツールSensesデベロッパーであるマツリカ社 執行役員の中谷氏は、昨今の営業スタイルの特徴は、分業化と、デジタルデータが揃っている所だと話す。※2

 ここで注目すべきはデジタルデータが揃ってきているという事と分業化がセットで語られている点だ。少し飛躍するが、これは裏を返せばデジタルデータを揃える事ができなければ、分業スタイルは成り立たない事を意味するのではないか? 


※2 中谷氏のインタビュー記事より「セールスというアートをサイエンスし、日本の営業をアップデートする」マツリカの中谷氏が語るpickuponを使った法人営業



デジタルデータを揃える負債

pickupon株式会社提供  セミナー資料より https://contents.pickupon.io/pages/3983399/blog


それを補完するように、上述した小幡氏は分業化のトレンドが生み出した負債として、莫大な情報共有コストがあると話す。

 その一例として、ある企業の一人のセールスはSFAへの情報入力に業務の17%を使っていたという。事実、SFAへの入力コストが高く、オンボーディングしないといった話は良くあり、先程紹介したマツリカ社のプロダクトSFA Sensesは入力負荷を軽減する事を売りの一つとし急成長している。 


THE MODEL型の営業プロセスのメリット・デメリット

THE MODEL型の営業プロセスは、各JOBの専門家が進み生産性が上がるだけではなく、福田氏も言及するように、その事業のボトルネックが把握しやすくなる分析のフレームワークでもある。そして、その営業プロセスはデジタルデータをなめらかに扱えるようになった事で成立する。

 しかし、デメリットもあり、時にはチームを分断するかもしれない。分かつことは、分析も可能にするが、分断のリスクもあるという事だ。 


そして、これはTHE MODEL内で言及されていないが、分断されるリスクがあるのは、本当にチーム内だけなのか? 顧客との分断はありえないのか?



最適化され、分業化が進んだ営業プロセスは愛を届けられるのか?


マーケティングオートメーションやCTI、SFAの普及により、プロセスの細分化、顧客のウェブ上の行動が簡単にトラッキングできるようになり、営業スタイルが飛躍的に進化したが、顧客側は実際のところどうなのだろう。

 例えば、2Cにおいて、ユニクロのサイトを一度訪れただけで、毎日2、3通のメールが届き、ウェブに接続すると広告はユニクロ一色となり、別のサイトを訪れるたび毎回そのような調子であっては随分と疲弊してしまうし、2Bシーンで始めに話していたインサイドセールスと実際に商談をするフィールドセールスが別の人間であることで失うものはないのだろうか? 


営業と愛

ある、マーケティングティングサービスを売るスタートアップの代表者にインタビューをした時、代表者が自社ではTHE MODEL型の分業スタイルを採用しないと言っていた。そして営業活動において「友愛」のような感情を顧客に感じることが重要だと話していた。

 事実、私の経験上も、顧客に愛情を意識的に持ち、その顧客の好きな所を必ず商談内で伝える事をKPIにした時、受注率が数倍になった。

 また、ある非分業型を採用する組織のトップセールスに営業のコツをインタビューした際、瞬間的に顧客へ愛情を感じるようモードを変えていると聞いた。

 一方でSalesforce Venturesから出資を受け、THE MODEL型の分業営業スタイルを採用する業務効率化SaaSを販売するRECEPTIONIST社では、顧客がどんな人柄だったかをインサイドセールスからフィールドセールスへ丁寧にパスし、ディスカッションしているという。※3 受付システムという対人に対する思い入れがあるチームの「THE MODEL」ではそういった形で分断をフォローしていると考えられないか? 


※3 RECEPTIONIST社 インサイドセールスチームへのインタビュー記事より「効率化×受付の心、半期で約2.5倍アポ供給数を伸ばしたRECEPTIONIST流インサイドセールス」



しかし、いずれにせよ愛は届ける必要がある


顧客への愛をそれぞれが片隅に意識することができたら、より大きな満足度・幸福度につながる。テクノロジーにより進化した営業プロセスは愛を届けられるのか?デリバリータイムを極限まで短くし顧客に届けたいものはなんなのか?

 私たちは分業型の営業プロセスを採用することも採用しないこともできる。しかし、いずれにせよ愛は届ける必要がある。