書籍「営業はいらない」が刺激的なタイトルで話題になっています。
本書のテーマは、営業マン不要論の妥当性について検討すること。
営業マンを取り巻く環境の変化に着目しつつ、「営業の仕事はなくなってしまうのか?」について考察されています。
今回は、本書で触れられているキーワード「セールステック」について深堀りしつつ、営業マン不要論について再考したいと思います。
営業マン不要論は正しい?
定量的な事実
総務省統計局の労働力調査年報によると、営業マンの数はこの20年で大きく減りました。
いわゆる営業マンである「販売従事者」の数は、2001年の968万人から2019年に856万人に。実に1割以上減っています。
一方で、「営業・販売事務従事者」の数はここ数年で増加しています。
総務省統計局の国勢調査によると、2010年の56万人から2015年の70万人と1割以上増加。
営業マンの数が減り、営業事務従事者の数が増える。対象的な数値の変化を見せるこの事実は、一体何を示しているのでしょうか?
買い手に起きている変化
近年のECの発展によって、買い手は多くの情報を得るようになりました。
これは売り手である営業にとっては、大きな変化です。
営業の中に含まれる「商品を紹介する」という付加価値が、ECやインターネットによって代替されました。
今では、単に積極的なだけの営業は迷惑がられる時代です。
待ちの姿勢で売れる商品にこそ価値がある。そんな時代になってきています。
積極的な営業が求められない中で、売れる仕組みを構築することが必要な時代ともいえます。
インサイドセールスが主流になる?
これまで日本の企業では、営業マンが個人の戦術で仕事をすることが主流でした。
しかし、個人の営業マン頼みの時代は終わり、戦術ではなく戦略で勝負する時代になってきています。
例えば、米国では電気自動車のテスラが、戦略を駆使し大きな成功をしました。
ユーザーデータを高度に蓄積し、高い付加価値(ユーザーエクスペリエンス)を提供する仕組みがテスラ社にはあります。
この仕組みこそが戦略に他なりません。
そして、テスラ社の販売の仕組みでは、スーパー営業マンは必要とされないのです。
日本はマーケティング戦略においては後進国といわれています。
「営業はいらない」の文中では、こうした日本企業のことを、“長らく日本はトップの戦略不在によって、川下の総力戦を余儀なくされてきた”と表現しています。
米国の成功事例にならって、日本でもスーパー営業マン(フィールドセールス)は減り、マーケティング営業(インサイドセールス)が増加する流れは加速するでしょう。
営業マンを巻き込む技術革新
営業マンの減少、販売事務従事者の増加、こうした変化が起こった背景にセールステックの発展があります。
セールステックの発展によって、営業活動の見える化、ノウハウ化が進んできました。
また、顧客に対して取るべきアクションも明確になり、フィールドセールスよりインサイドセールスの存在感が増してきました。
セールステックの3つのツールを知ろう
これからの営業を考えるうえで、セールステックについての知識は必須です。
3つのツールについて違いを理解しましょう!!
MA
MAは、マーケティングオートメーションの略です。
顧客や見込み顧客の情報をデータとして蓄積し、購買につながる施策を打つために利用します。
わかりやすい事例でいうと、ECサイトでのリコメンド機能があります。
訪問履歴を端末情報などから判定し、同一人物であることを特定。
過去の閲覧履歴をもとにして、商品をおすすめするといったことができます。
また、メールマガジンを利用した販促活動もMAの代表的な施作の一つです。
ユーザーの購買の頻度や商品にあわせて、ベストなタイミングを選びメールを送ります。
ユーザーとしてこうした販促情報を受け取ったことがある方も多いのではないでしょうか??
SFA
SFAはセールスフォースオートメーションの略です。
SFAの代表的なシステムである、「salesforce」と混同されがちですが、セールスフォースオートメーションは一般名詞です。
SFAの役割は、提案からクロージングまでの顧客情報管理を行うことにあります。
そのために必要な、定量的な数値の蓄積ノウハウがあります。
顧客情報管理の中で重要視される指標は、例えば商談回数、投下したリソースなどが挙げられます。
商談の内容は定性的かつ重要な情報ですが、SFAでは有効に活用するためにはパターン化して定量的に測定されることもあります。
一見、定量的で測定不能と思える情報でも、セールステック分野ではノウハウの蓄積が進んでいます。
CRM
CRMはカスタマーリレーションシップマネジメントの略です。
商品購入後の顧客との関係を管理する目的のツールを指します。
顧客情報の一元管理ができ、メール配信を一斉に行う、クレーム対応歴を記録などが可能になります。
先ほど紹介した、MAツール領域と重複する部分があります。
CRMの特徴としては、商品購買後の顧客とのやりとりを記録できるので、開発部門に顧客の声を届けるといった活用ができます。
セールステックの影響力
セールステックの代表的な種類を紹介しました。
これらのツールは営業の仕事にどういった影響をもたらすでしょうか?
効率よい営業をもたらす
セールステックのツールによって効率よい営業が見込めるといわれています。
情報はデータとして蓄積されるため、その多くが定量的な情報となります。
データにもとづき判断を行うことで、客観的・合理的な営業判断ができるようになります。
また、メールやデジタル広告といった営業方法の選択肢が増えます。
データと組み合わせることで、お客さんのもとに足を運ぶよりも高い効果を生み出すこともできます。
一度に多くのお客さんにアプローチできるデジタルを駆使した営業は、ファーストコンタクトの手段として最適です。
従来の営業手法と組み合わせることで、営業の仕事の質を底上げすることができます。
営業のブラックボックス化を防ぐ
営業という仕事は個人商店化しやすい仕事だと思います。
管理職の方は、個々人の営業の実態が把握できない。会社として顧客情報を資産として管理したいけどうまくいかない。こうしたお悩みを抱えるケースは多いです。
セールステックのツールを使うと、情報の見える化が進みます。
管理者の管理工数を減らし、営業のブラックボックス化を防ぐ効果があります。
顧客情報を資産化できる
顧客情報が見える化されると会社には大きなメリットがあります。
成功事例を社内で共有し、他社への営業に生かすという選択ができるようになります。
営業活動の生産性向上が期待できます。
営業はいらない、なんてことはない
セールステックの発展によって、営業の仕事は進化することを説明してきました。
営業はいらない、は果たして真実なのでしょうか??
高度な営業さえも代替される?
書籍「営業はいらない」の中では、高度な営業すらも近いうちにセールステックのシステムに代替されると説明されています。
高度な営業というのは、工業用の金型製品のような専門性が高く、オーダーメイドで見積もりを提示するような製品の営業のことです。
こうした製品の営業ですら、過去の事例の蓄積で作業工数を見積もり、精緻な見積もりが出せるようになるそうです。
確かに、人間の中にある暗黙知を言語化、アルゴリズム化することで大幅な効率化はできそうです。
システムの流れに取り込まれてしまう営業の仕事には、未来はないのかもしれません。
いらないではなく、役割が変わる
セールステックの発展は、これまで人間が事務的にこなすことができた仕事を手放すことができるプラスの面があります。
営業としてより高いレベルの仕事に取り組むチャンスにもなりえます。
具体的にいうなれば、外勤型営業のスタイルから内勤型の営業スタイルへのモデルチェンジ。
セールステックを使いこなすことを前提とした営業、マーケティング分野へのキャリアチェンジ。
これらが営業に求められていることではないでしょうか?
10年後には営業という言葉の持つイメージがきっと変わっているのだと思います。
営業マンも思考力が求められる時代に
セールステックを使いこなす営業マンであるために、システムを使いこなすための思考力が必要です。
義務教育でもプログラミングが必修化され、プログラミング的思考が重要しされる時代の流れがあります。これからの営業マンにとっても、プログラミング的な思考力が必要です。
営業はいらない。さすがに表現は言い過ぎですが、営業の役割は確実に進化しています。
セールステックを実現するツール、デジタルマーケティングを駆使し、営業の新時代を乗り切っていきましょう!
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